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2017-08-15

光の彫刻

先日、本を整理していたら、大切にしていた作品集をみつけた。
Peter Markli 、スイスの建築家の作品集だ。絶版で今中古市場で10万円以上するらしい。
かれこれ数年開いてなかったが、スイス人建築家特有のごろっとした質感や古典や伝統を参照し踏襲する考え抜かれたプロポーションの立面たち。
スイスという国は多様で、決して都市とは言えないエリアで独自のスタンスを取りながら制作を続ける建築家が多い。
複数ある言語圏のなかで、その様相も違うし、ETHのように主流をなす建築教育が存在するもののその系譜が掴みにくい。
むしろ系譜なんてものはないのかもしれない。
都市とは距離を置き精力的に建築をつくり丁寧に発表し続けるスタンス。

この作品集をみて実際に訪れることを待望していた建築がひとつある。
スイスの山奥にある通称 彫刻家の家。
たどり着くには山岳列車の駅からバスに乗り換えたどり着くその街で唯一の酒場に入り、オヤジに話しかけるとカギを貸してくれる。
ドラクエのようだ。中は荒々しいコンクリートの壁と同じく荒々しい彫刻群、そして天井からの光だけだ。
天井高が変わり容積が違う各部屋は、不思議なことに違った豊かな光の状態をつくっている。

彫刻家ハンス・ヨーゼフソンの作品を飾るためだけにこの家は作られた。

自然光とマテリアルと彫刻だけでかたちづくる建築。どれだけ勇気づけられたか。
扱うものが選択的であればあるほど、豊かさを知覚する感性が研ぎ澄まされる。

La Congiunta / Peter Markli / Giornico

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